【インタビュー】アルコサイト、1stフルアルバム『一筋縄じゃ愛せない』で切り開く新たな未来

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アルコサイトが、4月3日に1stフルアルバム『一筋縄じゃ愛せない』をリリースする。2023年は、代表曲「墓場まで持っていくわ」がTikTokで話題となり、年間サブクス再生回数が前年比3倍を越える240万回再生を突破。10~20代のリスナーを中心に注目を集めている。

◆アルコサイト 動画/画像

2023年2月ごろから制作を始めたという今作には「ロックンロールさ」や「ラブソング」など全12曲を収録。彼らが鳴らしたい音楽を存分に詰め込んだ作品となっており、一層気合を込めたフルアルバムとなった。今回のインタビューでは、1stフルアルバムの制作秘話や演奏面で各メンバーがこだわり抜いたポイントのほか、5月から始まる全国ツアーへの意気込みなどについて、“一筋縄”ではもちろんいかない個性溢れる4人に伺った。

   ◆   ◆   ◆

■自分の思いをストレートに書くというところも
■HIPHOPの魂が入っている


──1stフルアルバム『一筋縄じゃ愛せない』を作るにあたって、テーマや構想などはありましたか?

北林 英雄(Vo,G):僕らはコロナ禍が起こった頃から配信でシングルを出したりしてきていて、その曲達が僕らの中でもシックリ合う感じがあったんです。つまり、最初に次のアルバムのイメージがあって、それに沿ってシングルを切っていったわけではないんですよね。シングルを断続的にリリースしていく中で、これだけ曲が溜まったんやったらフルアルバムにしようかということで、結果的にフルアルバムになったという流れでした。

──純粋に今の自分達がいいと感じるものを集めたアルバムといえますね。では、アルバムに向けてキーになった曲などはありましたか?

北林:前回のミニアルバム『仄かなる黎明に捧ぐ』(2022年1月発売)のツアーファイナルの翌日とかにリリースした新曲が「スーパームーン」だったんです。そこから始まっていきましたが、フルアルバムにしようと決めてから指針になったのはアルバムの最後に入っている「ラブソング」と1曲目の「TEENAGE KICKS」です。この2曲ができた時に、これをアルバムの最初と最後にしたいなと思ったんです。



──2曲共にライブ感に溢れていて気持ちが上がりますし、特に静かな導入パートから爽快感に溢れたアップテンポに移行する構成やファンの方への思いを綴った歌詞などを活かした「ラブソング」は注目の1曲といえます。

北林:今回のアルバムの制作で1番最初に出てきた「スーパームーン」も然りですが、僕は物語で作る歌詞が多かったんですね。“自分が”というよりは物語があって、主人公がいて、登場人物がいて、風景があって……という。そういう曲達を携えてライブをしていく中で“自分達は、どういうライブがしたいのか?”とか“お客さんと、どういう空間を作りたいのか?”といった部分が徐々に新たなものに変わっていったというか、ブラッシュアップされていったというのがあって。自分達はこういうライブがしたいんだということをロックバンドとして提示できるような曲にしたいなと思ってできたのが「ラブソング」です。

▲北林 英雄(Vo.G)

濵口 亮(B):「ラブソング」はメンバー全員すごく気に入っています。僕らは曲を作っている段階でタイトルも仮でついていて、たしかこの曲は「アルペジオ始まり」みたいな簡単なタイトルだった(笑)。(北林)英雄以外のメンバーはいつも1番最後に曲のタイトルを知ることになるんですけど、この曲は“こういう歌詞で「ラブソング」というタイトルになるんや”という。それは、ちょっと面白いなと思いましたね。

森田 一秀(Dr):僕はドラムをやっているのでリズムパートだったり、曲の速度感だったりを提案することが多いんですけど、この曲は最初はゆっくりで、そこから“ガッ!”と速くなるじゃないですか。だけど、合唱パートのところは広がって、みんなで歌いたいというのがあって、そこまでの速度感のままでいくとちょっと速いんですよ。歌いにくいな……みたいな。だから、ちょっとテンポを落として、その後最後はまた駆け抜けるように上がるという速度感にこだわりました。

──えっ? ということは、レコーディングでクリックを使わなかったのでしょうか?

森田:いえ、そこだけクリックのBPMを変えたんです。

──えええっ! 凄いことをされますねぇ……。

森田:ひたすら練習しました(笑)。

小西 隆明(G):そういうことに対応できるドラムがいるというのは、自分達の大きな強みだと思いますね。「ラブソング」に関しては製作面の話になりますが、コロナ禍に入ってから曲の作り方が変わったというのがあって。今まではスタジオにみんなで集まって、そこでガッと形にして、それぞれのパートを各々が打ち込んでデモを作ることが多かったけど、コロナ禍になってからはみんなで集まって、英雄が持ってきたデモ……弾き語りデモみたいなものを一旦最後まで作りきって、それを僕が家でDTMで形にするというやり方が主流になったんです。ドラムとかベースとかも僕が打ち込んで、ギターも弾いて、英雄が仮歌を乗せて……という。英雄には歌詞をギリギリまで悩んでほしいというのがあるので、打ち込みをする段階では歌詞は確定していないんですけど、これはこっちのほうがいい、これはこっちの方向にいきたいねんな……といった英雄のイメージを最優先して形にしていったんです。「ラブソング」もそういうやり方で作ったので、英雄のイメージどおりにいけたし、僕らもいい形で寄り添えたなという感覚がありますね。

──いろいろなことが不自由になってしまったコロナ禍の中でも、バンド感を失わない曲の作り方をされていたんですね。「ラブソング」の歌詞は“悲しい時は歌を歌おう/寂しい時は手を繋ごう”ということを歌いつつ“自分らしくあればいいんだよ”というメッセージが込められたものになっています。

北林:今までいわゆるラブソングと言われるものをいっぱい書いてきていて、今のアルコサイトで1番人気があるのも「墓場まで持っていくわ」(『思い出に変わるまで』2022年3月収録)という曲だったりするけど、自分自身が自分らしくあれる場所が僕にとってはロックなんです。ライブハウスでお客さんと一緒にライブをしている時こそが自分らしくいられる瞬間で、お客さんにとってもそうあってほしいということを歌うことこそがラブソングかなと思って、こういう歌詞とタイトルにしました。



──ファンの方に対する深い愛情を感じます。そして、『一筋縄じゃ愛せない』は爽やかかつアッパーな楽曲を軸としつつ、切ないナンバーあり、スタイリッシュなロックチューンもあるなど幅広さを見せていることが印象的です。それぞれ今作の中で、特に印象の強い曲をあげるとしたら?

北林:それこそ全曲気に入っているので強いて言えばですが、僕は4曲目の「迎え酒」です。自分自身がお行儀よく生きてきた人間ではないですし、お行儀よく生きている人間でもなくて、お酒を飲んで数々の失敗と伝説を残してきたというのがあって(笑)。「迎え酒」は、そういう部分をポップな歌にしたいなと思って形にしました。自分自身も楽になれる曲というか、はしゃげる楽しい曲で、僕はすごく好きです。

──「迎え酒」は明るい雰囲気が心地いいですし、Aメロの歌とラップの中間のようなボーカルも“おっ!”と思いました。

北林:僕が元々音楽を始めるきっかけになったのは、HIPHOPだったんです。自分の音楽的なルーツというか、核となる部分にHIPHOPとかがあって自分の思いをストレートに書くというところもHIPHOPの魂が入っている。とはいえ自分がしたいのはロックバンドなので、そこと掛け合わせた時にもっとラフに、楽にいける歌はこういう感じかなと思ってやってみました。

森田:僕は印象の強い曲が2曲あって、1曲は英雄が言った「迎え酒」です。やはりリズムとかのことになりますが、「迎え酒」はイントロのコードのまわしが結構独特というか、酔っぱらっている感じが出ていると思うんですよ。ちょっと気持ち悪い感じというか。それが、二日酔いとか迎え酒みたいに、酔っぱらって気持ちが悪い感じというテーマにめっちゃ沿っているなと思って。なので、リズムも真っすぐジャストに入れるというよりは、ちょっとタイミングをずらしたりしました。その反面Aメロとかのボーカルがラップ調のところはエレクトロ要素じゃないけど、すごく機械的なリズムを意識している。そういう使い分けをすごく意識した曲だったので印象に残っています。

──森田さん、やりますね。

森田:いやいや(笑)。もう1曲は「ウォーアイニー」で、個人的に「迎え酒」と対になるような曲なんです。「ウォーアイニー」は、ゆったりした大きなリズムで取りたいなということとビート感を聴いているだけで温かい気持ちになれるようなものにしたいなというのがあって。なので、1曲を通して落ち着いた感じのどっしりしたビート感ということを意識しました。曲中でリズム感を変えている「迎え酒」とは真逆なんですよね。自分の中で対になる2曲を1枚のアルバムに入れることができて良かったなと思います。

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